台湾の議会に当たる立法院でこのほど、中国大陸からの政治的な影響の阻止を目指「反浸透法」が可決・成立しました。これが、農業生産者にどのような影響を与えることになるのでしょうか。
台湾南部の高雄市大樹区で生産されるパイナップルの多くが、中国大陸に輸出されています。一部の生産者は、この法律が制定されたことで、中国大陸が台湾に対して敵意を高め、農産物を買ってくれなくなるのではないかと心配しています。そうなれば、生産過剰になってしまいます。
しかし、こうした心配を否定する生産者もいます。パイナップルの品質が良ければ、世界のどこにでも売れると考えているのです。
「反浸透法」は、中国大陸からの政治的な影響を阻止することを目的として制定されたもので、「海外の敵対勢力」の指示、委託、資金援助を受けて、政治献金を行ったり、違法に選挙活動に従事したり、または国家の安全、機密に関する国防、外交、対中国大陸事務について遊説を行うことを禁止しています。違反した場合は、最高で5年以下の懲役および1000万台湾元(日本円およそ3630万円)の罰金が科されます。
「海外の敵対勢力」とは、台湾と交戦しているか武力で対峙している国家、政治実体、団体、あるいは非平和的手段で台湾の主権に危害を与えることを主張する国家、政治実体、団体を指しています。
この法案は、与党・民進党が提出したもので、最大野党の国民党は「戒厳令の再来だ」などと主張して反対し、表決をボイコットしましたが、立法院で過半数を占める民進党の賛成多数で可決されました。
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台湾の議会・立法院ではこのほど、中国大陸からの政治的な影響の阻止を目指す「反浸透法」が可決・成立しました。これに対して、中国大陸に農産物を輸出している生産者は心配しています。
パイナップル畑では、袋掛けが行われています。
ここ、高雄市大樹区はパイナップルの大産地です。9割が中国大陸に輸出されています。しかし、「反浸透法」が可決されたことで、中国大陸の台湾に対する敵対意識が高まり、これから買ってくれなくなる可能性が心配されています。そうなると、深刻な生産過剰に陥ってしまいます。
大樹龍目陳家班鳳梨合作社の陳文賢・理事主席はこのように憂慮を示します。
「中国大陸を標的にしないでほしい。農産物の輸入がストップされてしまわないか、心配です」
パイナップルの収穫時期は2月です。このため、今はまだ、どのような影響があるか分かりません。このため、春節(旧正月)が開けて収穫期に入った時、影響があるかどうか懸念しています。
しかし、一方ではそうは考えない生産者もいます。
大樹区でパイナップルを生産している楊義子さんは、「私たちはみんな、正直に商売をしています。それほど深刻な影響はないでしょう」と話します。
また、輸出に協力している商社としても、中国大陸だけに輸出しているわけではないと考える人もいます。
同じ大樹区の尤峻さんは、「商社は世界のあちこちと取引している。中国大陸だけじゃない」
台湾でのパイナップルの生産量は、2018年に58万トンでした。そのうち、冷蔵で輸出されたのは3万トンで、全体の20分の1にとどまっています。中国大陸市場が重要なことは確かですが、台湾の内需市場は多くの人が考えているよりずっと大きなものがあります。
新聞來源:RTI
編集:早田健文